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お知らせ

2023年2月 GOOD MAN vol.36 池上 慶行氏をお招きして

2月15日、GOOD MAN vol.36を開催いたしました。

今回の講師は倉敷で循環するジーンズを手がける池上慶行さん。

ほんとに偶然ですが、15日から21日まで川西阪急で池上さんのブランド land down under の全ての商品に実際に触れることができるポップアップが開催されていました。

さて、当日の様子ですが、池上さんのものづくり愛にすっかり魅せられてしまいました。

経歴もユニークです。新卒で有名アパレルに就職後、思い描いたものづくりとは遠いなと感じ早々に退職、地域おこし協力隊で東京から倉敷に移住。ジーンズづくりの現場を見て回るうちに、ぜんぜん使えそうな素材なのに廃棄になっちゃうんだ、もったいなとの思いからブランドを立ち上げているんです。

なんでも、倉敷にある中堅メーカー1社だけで月に300~400mくらいのジーンズ生地を規格外としてほぼほぼ廃棄しているのだとか。それもちょっと傷があるとかではなく、糸が1回多く編み込まれてしまったなどの見た目にはほんとにわからないものだったりするそうです。

それを生地屋さんがきちんと利益がでる額で買い取って、規格外箇所もその商品の個性として受け入れ、長く愛せる服づくりをしています。

また、履かなくなったジーンズを提携してるアパレルショップで回収して、反毛して再び生地に戻すということもやってらっしゃいます。実際に反毛して生地から作られたプロトタイプを見て触らせていただきました。「改善点多くて、まだまだ商品化には遠いですねー」とおっしゃっていましたが、私の目にはきちんと完成していて、こんな風になるんだと感動しました。

私がすごいなと思ったのは3つあって、

1つは、規格外品を生地メーカーが利益のでる価格で買い取っている。

2つめは、規格外品だからといって最終的な商品の品質に妥協せず、こだわってものづくりをしている。

3つめは、自分たちだけで利益を独占しようとしていない。

1つのめのは、これがとてもサステナブルなことだと思って今回GOOD MANとしてお呼びしたわけですが、生地メーカーって利益率がすごく低いらしいんですね。そうすると、早晩後継者不足になるだろう、結果、ものづくりが地域からなくなってしまうみたいなことが想像できるわけですが、池上さんのやり方だとメーカーの利益率を上げることになるわけです。後継者不足の課題をクリアできる可能性があるなと。池上さんの商品が売れれば売れるほど、製造や加工してる地域に還元されるんだなと。

2つめのは、よくあるリサイクル品だから、エコだからみたいなことを全面にだしてデザイン性を犠牲にしてるようなことをしていないんだなと。きちんとものづくりで勝負してるんですね。機能性は失わずにリサイクルしやすいデザインというのを工場の人といっしょに試行錯誤しながらつくっています。規格外部分はその商品のユニークさとして昇華しています。買ってくれる人はリピーターが多いという話がそれを証明しているように思いました。

3つめのは、これは個人的にもっとも驚いたことになるかもしれません。私が「1つのメーカーで月300~400mの生地の廃棄がでてるんなら、もっとブランドを大きくしてインパクト出さないといけないですね」と何気に言ったとき、池上さんは「自分たちだけで全部やろうとか、独占しようとかは思っていないんです。ただ、こういうやり方もあるよと多くの人に知ってもらえたら、そういうブランドが増えれば、結果的に世の中全体で廃棄が減るんじゃないか、より大きなインパクトを残せるんじゃないかと考えています」とおっしゃったんですね。

絶え間なく質問がでてくる会になったんですが、丁寧に言葉を選びながら答えていただき、すごく内省的な方なんだろうなという印象を受けました。日々、いろんなことを考えているのだろうなと。

その営みがブランドにも表れているんだろうと感じました。池上さんのブランドは地方創生という面からも、SDGsやエコフレンドリーという面でも、ものづくりという面からもみれるのですが、そのそれぞれのバランスのとり方が上手だなと。立ち位置であったりポジショニングを正確に理解しているから過剰に地方創生をアピールしたり環境面への貢献からブランドをアピールしたりしないんだなと。また、その過剰にアピールすることでブランドを棄損するリスクまで正確に把握してらっしゃり、安易に「ガンガンアピールしてもっと売りましょう!」みたいに考えていた自分が少し恥ずかしくなりました。

※業界のトップランナーからリアルなお話を近い距離で聞けるのが魅力のGOOD MAN、

次回は3月16日開催です!