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KiP・OBインタビュー Vol.015 電送数学舎 外林 康治さん
定年後、趣味ではじめたウェブサイトをKiPに入居後、事業化しました
今回のKiP・OBインタビューは電送数学舎の外林 康治さんです。主に塾講師として予備校などに勤め、60歳の定年後にKiPに入居されました。入居以前の趣味と職歴が直結したことがきっかけで、定年退職後のビジネスが生まれたそうです。その経緯についてじっくりお聞きしました。
外林 康治(そとばやし・こうじ)。予備校の数学講師、医学書の編集者などを経て、大学入試問題と解答を掲載しているウェブサイト「電数図書館」を運営。さまざまな大学の入試問題を扱い、書籍、電子書籍を販売している。
ーーーKiPに入居される前はどんなことをされていたのでしょうか?
KiPに入居するまでは全国を点々としていました。広島県福山市で生まれ育ち、その後、大学で京都に出てきました。最初は工学を学び、その後、理学部で生物を学び、6年間京都にいました。卒業後の1年ぐらいはフラフラしてましたね。
新聞広告で求人を探して、東京都江東区の予備校で塾講師として数学を教えていたのは80年代ちょっと前の頃ですね。多くの人が大学に進学するようになって、塾が乱立していた時代で予備校は常に人手不足でした。でも、最初の予備校は1年で辞めて、横浜のYMCA予備校で4〜5年ほど働きました。
その後、大学時代の友人から出版社が人を探していると連絡があり、医学系の専門書を扱う会社で編集者として働きました。それは昭和の終わり頃でしたが、あの東京の空気がどうも好きになれなかったです。
その後はまた横浜のYMCA時代の同僚が熊本の責任者になるというので熊本で塾講師をしました。その後、広島のYMCAにうつり、塾講師や経営に関わりました。
その頃、パソコンを買って趣味でホームページをつくっていました。この趣味が今のビジネスにかかわってきます。予備校の塾講師として生徒用に、共通一次やセンター試験などの大学の試験問題と回答をPDF化してアップロードして閲覧できるようにしていたんです。
当時のパソコンでは数式のグラフをつくるのが難しかったんですが、たまたまそれができるソフトをパソコン雑誌の懸賞で当選して、PDFで表示することができました。

1998年にウェブサイト「大学入試数学電子図書館(現在は電数図書館)」を開設したんですが、それを今も続けています。
ーーーではKiPに入居されたのは趣味でつくったウェブサイトを事業にするのが目的だったんですね。
そうですね。60歳の定年後はしばらく福山市に戻って家で作業したり、KiPのようなインキュベーションオフィスに1年間ほどはいました。ただ、福山市は書店が近くになくて、なかなか最新情報が手に入らない環境で以前から人工島に住んでみたいと考えていたこともあって、神戸のポートアイランドや六甲アイランド、大阪の南港あたりを調べて、条件の良かったポートアイランドに移り住みました。
それで特定商取引法では住所の明記が必要なので、いろいろ調べて三宮駅近くの商業施設サンパルにあった以前のKiPに入居しました。
KiPに入居してから、趣味でつくったウェブサイトを事業化していきました。もともとはGoogle AdSense広告だけを貼り付けているだけのサイトでしたが、電子書籍の販売と、製本書籍の販売をはじめました。製本書籍はAmazonのペーパーバックを利用しています。

注文があってから製本されるタイプの商品なので、在庫を置いておくための倉庫を持たなくてもいいのが利点です。書籍の取り扱いに関しては編集者の経験が役立っていますね。
ーーー入居されていた頃の思い出を教えてください。
KiPはお金まわりの相談ができるのがいいですね。また、ポートアイランドに住んでいるので利便性が良かったです。
実際に作業するスペースが確保できたのもうれしかったし、ゴミ出しとか掃除とかきれいにしてもらえるのが年寄りには助かります。製本書籍を扱うようになってから、本屋の外商の方がよく来られるようになったので、近くに事務所を借りました。この新事務所への引っ越しをコンシェルジュの平川さんに手伝ってもらいました。ありがたいです。
コロナ禍なので今はできませんが、サンパル時代は施設内で飲み会をしていましたね。みんなで集まれる状況に戻ってほしいですね。
取材・文/狩野哲也 撮影/横山宗助